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屋根に降る雪
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先頭 じんぶつ
雪T 雪U
じんぶつ
たくや
祖母
ネコ
女の人
屋根に降る雪T
1 夜の雪
夜になってから村には雪が降ってきました。雪はたくやの家の屋根にも降り積もりました。静かな夜です。たくやはいつもひとりで寝ていました。たくやは寝ているときに時々母親の夢を見ました。
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2 学校に
朝になりました。雪は止んでいましたが、空はどんよりと曇っていました。たくやは祖母に挨拶をして学校に出かけました。たくやの母親は、たくやが小さいときに亡くなりました。父親は出稼ぎに出かけていて、大晦日まで帰ってきません。たくやは祖母と二人で暮らしていました。山奥のたくやの家から、街の学校までは随分と距離があります。たくやは毎日歩いて遠い学校まで通っていました。
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3 クリスマスが近い
でも、学校ではいつもひとりでぼんやりとしていました。たくやはあまり学校が好きではありません。たくやは授業が終わってからもしばらくの間学校でぼんやりしていました。たくやの家は早く帰っても誰もいません。それなら、にぎやかな学校にいたほうがましです。最終下校の時間になると、たくやは家に向かって歩きました。歩いていると、雪が降り始めてきました。
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4 道端
街には、クリスマスが近いので、赤や緑の美しい飾り付けがしてありました。どこからかサイレントナイトの音楽が流れてきます。帰る途中、道端に箱が置いてありました。その中にはネコが捨てられていました。雪は箱の中にも少し積もり始めていました。ネコは寒さに震えていました。たくやはネコを箱から出すと、自分の懐に入れて歩き始めました。
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5 同級生
5 同級生
少し歩くと、マー君の家の窓明かりが見えました。マー君は同級生です。家は道沿いにあるので、歩いていると中が見えました。マー君は炬燵に入ったままうたた寝をしているようでした。そばで母親が寝顔を見ていました。炬燵の上にはクリスマスケーキとプレゼントが用意されていました。目が覚めたらマー君はきっとびっくりするに違いありません。部屋にはストーブが赤く燃えていて、暖かそうでした。家の屋根には雪が降り積もっていました。
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6 家路
たくやは足早に過ぎ去ると、家路を急ぎました。雪は次第に激しくなり、またたく間に道路に大量の雪が降り積もりました。強い風が吹いて、とても寒く感じました。山道に入るとさらに雪は激しくなりました。たくやが家に着くころには歩くのも難しいくらいに積もりました。 つぎへ もくじ
7 ネコ
たくやはストーブで部屋を暖めました。そしてミルクをネコに飲ませました。ネコは少し元気になったようでした。少しだけど元気になってよかったとたくやは思いました。ネコは炬燵の上で丸くなりました。たくやは祖母をまって炬燵に入っていました。今日はクリスマスです。祖母がかえってくれば、すこしはさびしくなくなると思いました。なにかおいしいものや、すてきなプレゼントを買ってきてくれないかな。そんなふうに思ってまっていました。
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8 大雪
しばらくすると、祖母から電話がかかってきました。大雪で道が通れなくなったから、街の店のほうに今夜は泊まるという話でした。夕ご飯は冷蔵庫にあるものを温めて食べて欲しいということでした。
「えっ…、そんなあ…。」
たくやは祖母が帰ってこないのを寂しく思いました。でも、こんなに大雪では仕方ありません。たくやは冷蔵庫の食べ物を温めると食べました。ネコにも食べ物を分けてあげました。食べると少しうとうとと眠くなりました。
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屋根に降る雪U
9 不思議
ネコがミャアと一声鳴きました。入り口の扉をこんこんとたたく者がいます。たくやは目を覚ますと、扉のほうへ向かって歩いて行きました。こんな大雪の夜中に誰だろうか。おばあちゃんが帰ってきたのだろうかと思いました。たくやが扉を開けると、女の人が立っていました。こんな雪の中どうやって来たのだろうかとたくやは驚きました。不思議なことに女の人は、着物にも髪の毛にもあまり雪がついていませんでした。
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10 女の人
「ごめんなさい。雪の中で迷ってしまって。」
女の人は優しそうな感じで、悪い人には見えませんでした。
「どうぞ、あがってください。」
たくやはそう言うと女の人を部屋に案内しました。部屋はストーブで温められています。
「どうぞ、炬燵にあたってください。お茶でもどうですか。」
「あら、ボクは座っていて。私がやるわ。」
そう言うと女の人は、どこが台所だとも言わないのにそちらのほうに行って、お茶を沸かしました。たくやの分と女の人の分のお茶が用意されました。
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11 ケーキ食べる?
たくやはお茶を飲みました。おばあちゃんの入れるお茶と同じ味だと思いました。
「今日はクリスマスでしょう。ケーキ食べる?」
女の人はそう言いました。
「食べたい。」
たくやは言いました。女の人はバッグからケーキの箱を出すと、たくやの分と自分の分とネコの分にケーキを分けました。
「おいしそうだね。」
たくやが言いました。
「チョコレートのついているところをどうぞ。」
たくやは一番豪華な飾りがついているところをもらいました。
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12 蝋燭
女の人がケーキに蝋燭を立て、火をつけてくれました。火はゆらゆらと揺れました。
「サンタクロースには何をお願いしたの?」
「サンタさんなんていないよ。」
たくやはそう答えました。今日は不思議な日です。いつもは祖母と二人なのに、今日はネコと女の人と一緒です。しかもケーキまで食べています。たくやは炬燵に足を入れたまま寝転がって、女の人に自分のことを話しました。
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13 お話
たくやは学校のことや家のことを話しました。いつも、無口であまり話をしなかった分を、一晩で話してしまうぐらいお話をしました。女の人は聞いているばかりで、自分のことは何も話しませんでした。たくやはそのうちに寝てしまいました。窓の外には雪が降り続いていました。雪はいつまでも降り続くようでした。窓には赤い靴下がぶら下げてありました。
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14 朝に
14 朝に
朝になりました。たくやは炬燵に足を入れたまま目が覚めました。ストーブは一晩中燃え続けていたようです。昨日の女の人はいつの間にかいなくなっていました。ケーキの箱も湯飲みもありません。夢だったのでしょうか。たくやはネコを見ました。ネコは夢見るようにすやすやと寝ていました。
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