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風と旅人の詩

滝と月の詩

かぜ旅人たびびと
もどる



 桜舞い落ちる湖から

 野を旅する

 雨だから

 いつも見る夢

 風と旅人の歌




かな もどる 野を旅する 


桜舞さくらまいおりるみずうみから
    木村達也きむらたつや

がけしたみずうみがある
しずかな湖面こめんなみもたたずに
かがみのようにいでいた

がけうえさくらがある
うすべにいろはなびらはかぜかないのに
はらはらとみずうみいおりていた

旅人たびびとちいさなゆめみずうみげた
みずうみちいさな波紋はもんひろがっていった

旅人たびびと
ひとりでどこに
あるそうというのか
ここからさきは
どこへいってもさびしいだけ
なにをてもかなしいだけなのに





桜舞いおりる湖から
     木村達也

崖の下に湖がある
しずかな湖面は波もたたずに
鏡のように凪いでいた

崖の上に桜の木がある
うすべに色の花びらは風も吹かないのに
はらはらと湖に舞いおりていた

旅人は小さな夢を湖に投げた
湖に小さな波紋が広がっていった

旅人よ
ひとりでどこに
歩き出そうというのか
ここからさきは
どこへいってもさびしいだけ
なにを見ても悲しいだけなのに

もどる 野を旅する

さくらまいおりるみずうみから
   きむらたつや

がけのしたにみずうみがある
しずかなこめんはなみもたたずに
かがみのようにないでいた

がけのうえにさくらのきがある
うすべにいろのはなびらはかぜもふかないのに
はらはらとみずうみにまいおりていた

たびびとはちいさなゆめをみずうみになげた
みずうみにちいさなはもんがひろがっていった

たびびとよ
ひとりでどこに
あるきだそうというのか
ここからさきは
どこへいってもさびしいだけ
なにをみてもかなしいだけなのに



Sakura mai oriru mizu'umi kara
   Kimura Tatuya

Gake no sita ni mizu'umi ga aru
Sizukana komen wa nami mo tatazu ni
kagami no yôni naide ita

Gake no ue ni sakura no ki ga aru
Usubeni iro no hanabira wa kaze mo hukanai no ni
harahara to mizu'umi ni mai orite ita

Tabibi to wa ti'isana yume o mizu'umi ni nageta
Mizu'umi ni ti'isana hamon ga hirogatte itta

Tabibito yo
hitori de doko ni
aruki dasô to iu no ka
Koko kara saki wa
doko e itte mo sabisi'i dake
nani o mite mo kanasi'i dake nanoni

かな もどる 雨だから 


たびする
  木村達也きむらたつや

あるいていくと
かぜうたこえてくる
太陽たいようひかりそそいでも
なにやらさびしげな足音あしおとはひとり

どこにかえりたいの?
これからどこにいくの?
やさしいうたこえたあの場所ばしょ
やさしい笑顔えがおのあったあの場所ばしょ

記憶きおくなかにある
あのやさしい場所ばしょ
どこへいったの?

はかないまぼろしのように
ふうわりと
えさったのだよ





野を旅する
  木村達也

野を歩いていくと
風の歌が聞こえてくる
太陽の光は降り注いでも
なにやら寂しげな足音はひとり

どこに帰りたいの?
これからどこにいくの?
やさしい歌の聞こえたあの場所へ
やさしい笑顔のあったあの場所へ

記憶の中にある
あのやさしい場所は
どこへいったの?

はかないまぼろしのように
ふうわりと
消えさったのだよ

もどる 雨だから 

のをたびする
    きむらたつや

のをあるいていると
かぜのうたがきこえてくる
たいようのひかりはふりそそいでも
なにやらさびしげなあしおとはひとり

どこにかえりたいの?
これからどこにいくの?
やさしいうたのきこえたあのばしょへ
やさしいえがおのあったあのばしょへ

きおくのなかにある
あのやさしいばしょは
どこへいったの?

はかないまぼろしのように
ふうわりと
きえさったのだよ


No o tabisuru
   Kimura Tatuya

No o aruite iru to
kaze no uta ga kikoete kuru
Taiyô no hikari wa huri sosoide mo
naniyara sabisigena asioto wa hitori

Doko ni kaeritai no ?
Korekara doko ni iku no ?
Yasasi'i uta no kikoeta ano basyo e
Yasasi'i egao no atta ano basyo e

Kioku no naka ni aru
ano yasasi'i basyo wa
doko e itta no ?

Hakanai maborosi no yôni
hûwari to
kiesatta no dayo


かな
 もどる いつも見る夢 


あめだから
  木村達也きむらたつや

あめがふっているね
あめなかにじっとたたずんで
ずっとしたをむいたまま
こぶしをにぎってなみだをこらえていたね

どうしてこういつもいつも
あめがふるのだろう
どうしてこういつもいつも
あめばかりなのだろう

みちのまんなかにたちつくして
すすむこともできずにいる

あめおとおおきすぎるから
やさしいこえこえない
あめでけむっているから
やさしいあなたのすがたがえない





雨だから
  木村達也

雨がふっているね
雨の中にじっとたたずんで
ずっと下をむいたまま
こぶしをにぎって涙をこらえていたね

どうしてこういつもいつも
雨がふるのだろう
どうしてこういつもいつも
雨ばかりなのだろう

道のまんなかにたちつくして
進むこともできずにいる

雨の音が大きすぎるから
やさしい声が聞こえない
雨でけむっているから
やさしいあなたのすがたが見えない

もどる いつも見る夢 

あめだから
   きむらたつや

あめがふっているね
あめのなかにじっとたたずんで
ずっとしたをむいたまま
こぶしをにぎってなみだをこらえていたね

どうしてこういつもいつも
あめがふるのだろう
どうしてこういつもいつも
あめばかりなのだろう

みちのまんなかにたちつくして
すすむこともできずにいる

あめのおとがおおきすぎるから
やさしいこえがきこえない
あめでけむっているから
やさしいあなたのすがたがみえない



Ame dakara
   Kimura Tatuya

Ame ga hutte irune
Ame no naka ni zitu to tatazunde
zutto sita o muita mama
kobusi o ni gitte namida o koraete ita ne

Dôsite kô itumo itumo
ame ga huru no darô
Dôsite kô itumo itumo
ame bakarinano darô

Miti no mannaka ni tati tukusite
susumu kotomo dekizu ni iru

Ame no oto ga ôki sugirukara
yasasi'i koe ga kikoenai
Ame de kemutte iru kara
yasasi'i anata no sugata ga mienai


かな もどる 風と旅人の歌 


いつもゆめ
     木村達也きむらたつや

いつもよるゆめていた

ちいさないえがあって
あかるい電灯でんとうがついている
ちいさな部屋へやなかからは
あかるいわらこえひびいている
そんなゆめていた

いつからなのかな
そんなゆめなくなったのは

ちいさないえがあって
あかるい電灯でんとうがついている
ちいさな部屋へやなかからは
あかるいわらこえひびいている

いつからなのかな
そんなはなしきたくなくなったのは





いつも見る夢
     木村達也

いつも夜に夢を見ていた

小さな家があって
あかるい電灯がついている
小さな部屋の中からは
あかるい笑い声が響いている
そんな夢を見ていた

いつからなのかな
そんな夢を見なくなったのは

小さな家があって
あかるい電灯がついている
小さな部屋の中からは
あかるい笑い声が響いている

いつからなのかな
そんな話を聞きたくなくなったのは


もどる 風と旅人の歌 

いつもみるゆめ
   きむらたつや

いつもよるにゆめをみていた

ちいさないえがあって
あかるいでんとうがついている
ちいさなへやのなかからは
あかるいわらいごえがひびいている
そんなゆめをみていた

いつからなのかな
そんなゆめをみなくなったのは

ちいさないえがあって
あかるいでんとうがついている
ちいさなへやのなかからは
あかるいわらいごえがひびいている

いつからなのかな
そんなはなしをききたくなくなったのは



Itu mo miru yume
   Kimura Tatuya

Itumo yoru ni yume o mite ita

Ti'isana ie ga atte
akarui dentô ga tuiteiru
Ti'isana heyano naka kara wa
akarui waraigoe ga hibi'ite iru
Sonna yume o mite ita

Itukara nano kana
sonna yume o minaku natta no wa

Ti'isana ie ga atte
akarui dentô ga tuite iru
Ti'isana heya no naka kara wa
akarui waraigoe ga hibi'ite iru

Itukara nano kana
sonna hanasi o kikitaku nakunatta no wa


かな もどる 


かぜ旅人たびびとうた
   木村達也きむらたつや

旅人たびびとはひとり
くされるあるいている
旅人たびびとちどまって
とおいそら

あおそらにひとつ
しろくもながれている

旅人たびびと
あなたのきな
うたはどんなうた

ほらみみましてごらん
かぜこえこえるよ

それはとおいふるさとのうた
それはやさしかったひと
くちずさんでいたうた





風と旅人の歌
   木村達也

旅人はひとり
草の揺れる野を歩いている
旅人は立ちどまって
とおい空を見た

青い空にひとつ
白い雲が流れている

旅人よ
あなたの好きな
歌はどんな歌?

ほら耳を澄ましてごらん
風の声が聴こえるよ

それはとおいふるさとの歌
それはやさしかった人が
口ずさんでいた歌

もどる 

かぜとたびびとのうた
   きむらたつや

たびびとはひとり
くさのゆれるのをあるいている
たびびとはたちどまって
とおいそらをみた

あおいそらにひとつ
しろいくもがながれている

たびびとよ
あなたのすきな
うたはどんなうた?

ほらみみをすましてごらん
かぜのうたがきこえるよ

それはとおいふるさとのうた
それはやさしかったひとが
くちずさんでいたうた


Kaze to tabibi to no uta
    Kimura Tatuya

Tabibito wa hi to ri
kusa no yureru no o aruite iru
Tabibito wa tatidomatte
tôi sora o mita

Aoi sora ni hitotu
siroi kumo ga nagarete iru

Tabibito yo
Anata no sukina
uta wa donna uta?

Hora mimi o sumasite goran
Kaze no uta ga kikoeru yo

Sore wa to oi hurusato no uta
Sore wa yasasikatta hito ga
kutizusande ita uta



たきつき もどる
暗い森の中で

1
滝を見る

2
暗い谷を遡る

3
天上から降り注ぐ

4
天から降りる水

5
天から落ちてくる水

6
川を下る魂

7


8
振り返るとき

9
なくなった橋

10
泣いている水車

11
またここに

12

たきつき
かな もどる 滝を見る


くらもりなか
  木村達也きむらたつや

あきもりなか
ながれるつめたいみず

だれもらない
くらたになか

湿しめったつち
もった

だれもらない
くらたになか

さまようたましい
どこにいっていいのか
わからない

さまようたましい
くらもりなか
ぐるぐるとまわるだけ





暗い森の中で
  木村達也

秋の森の中に
流れる冷たい水

だれも知らない
暗い谷の中

湿った土に
降り積もった葉

だれも知らない
暗い谷の中で

さまよう魂は
どこにいっていいのか
わからない

さまよう魂は
暗い森の中で
ぐるぐるとまわるだけ







もどる 滝を見る

くらいもりのなかで
  きむらたつや

あきのもりのなかに
ながれるつめたいみず

だれもしらない
くらいたにのなか

しめったつちに
ふりつもったは

だれもしらない
くらいたにのなかで

さまようたましいは
どこにいっていいのか
わからない

さまようたましいは
くらいもりのなかで
ぐるぐるとまわるだけ


Kurai mori no naka de
  Kimura Tatuya

Aki no mori no naka ni
nagareru tumetai mizu

Dare mo siranai
kurai tani no naka

Simetta tuti ni
huritumotta ha

Daremo siranai
kuraita ni no naka de

Samayô tamasi'i wa
doko ni ittei'i no ka
wakaranai

Samayô tamasi'i wa
kurai mori no naka de
guruguru to mawarudake










かな もどる 暗い谷を遡る


たき
 木村達也きむらたつや

さまようくらもりなか
ながれるたにみずおと
はるこうから
たきながちる
おとこえる

かわさかのぼ
おとさき
たどりけば
てんからながちてくる
大量たいりょうみずがあった

見上みあげれば
あおそら彼方かなたから
轟々ごうごうくだけながら
ながちてくる

見上みあげれば
たきうえ
あおてん世界せかい
ひろがっている





滝を見る
 木村達也

さまよう暗い森の中で
流れる谷の水の音の
遥か向こうから
滝の流れ落ちる
音が聞こえる

川を遡り
音の先に
たどり着けば
天から流れ落ちてくる
大量の水があった

見上げれば
青い空の彼方から
轟々と砕けながら
流れ落ちてくる

見上げれば
滝の上に
青い天の世界が
広がっている










もどる 暗い谷を遡る

たきをみる
  きむらたつや

さまようくらいもりのなかで
ながれるたにのみずのおとの
はるかむこうから
たきのながれおちる
おとがきこえる

かわをさかのぼり
おとのさきに
たどりつけば
てんからながれおちてくる
たいりょうのみずがあった

みあげれば
あおいそらのかなたから
ごうごうとくだけながら
ながれおちてくる

みあげれば
たきのうえに
あおいてんのせかいが
ひろがっている


Taki o miru
     Kimura Tatuya

Samayô kurai mori no naka de
nagareru tani no mizu no oto no
haruka mukô kara
taki no na ga reotiru
oto ga kikoeru

Kawa o sakanobori
oto no saki ni
tadoritukeba
tenkara nagare otite kuru
tairyô no mizu ga atta

Miagereba
aoisora no kanata kara
gôgô to kudakenagara
nagare otite kuru

Miagereba
taki no ue ni
aoi ten no sekai ga
hirogatte iru








かな もどる 天上から降り注ぐ


くらたにさかのぼ
  木村達也きむらたつや

つきのあるよる
あのつきているひと
たくさんいるだろうけど

この山奥やまおくはいって
ながれるたきおと
いているのはぼく一人ひとり
あるいはカモシカもいているか

ぼくのたましい
このくらたにさかのぼ
ながちるたき
やまうえへとのぼっていき
たなびくくもになる

そして、見晴みはらしのよい
たかところからしたながめたり

見晴みはらしのよい
たかいところをいったりきたりする





暗い谷を遡る
  木村達也

月のある夜
あの月を見ている人は
たくさんいるだろうけど

この山奥に分け入って
流れる滝の音を
聞いているのはぼく一人
あるいはカモシカも聞いているか

ぼくの魂は
この暗い谷を遡り
流れ落ちる滝を越え
山の上へと登っていき
たなびく雲になる

そして、見晴らしのよい
高い所から下を眺めたり

見晴らしのよい
高いところをいったりきたりする







もどる 天上から降り注ぐ

くらいたにをさかのぼる
    きむらたつや

つきのあるよる
あのつきをみているひとは
たくさんいるだろうけど

このやまおくにわけいって
ながれるたきのおとを
きいているのはぼくひとり
あるいはカモシカもきいているか

ぼくのたましいは
このくらいたにをさかのぼり
ながれおちるたきをこえ
やまのうえへとのぼっていき
たなびくくもになる

そして、みはらしのよい
たかいところからしたをながめたり

みはらしのよい
たかいところをいったりきたりする


Kurai tani o sakanoboru
     Kimura Tatuya

Tuki no aru yoru
Ano tuki o mite iru hito wa
takusan iru darô kedo

Kono yamaoku ni wakeitte
nagareru taki no oto o
ki'iteiru no wa boku hitori
Arui wa kamosika mo ki'ite iruka

Boku no tamasi'i wa
kono kurai tani o sakanobori
nagare otiru taki o koe
yama no ue e to nobotte iki
tanabiku kumo ni naru

Sosite miharasi no yoi
takai tokoro kara sita o nagametari

Miharasi no yoi
takai tokoro o ittari kitari suru










かな もどる 天から降りる水


天上てんじょうからそそ
  木村達也きむらたつや

くもとなったたましい
天上てんじょうをいったり
きたりする

そして
天上てんじょう
あつまりはじめる

やがてたましい
あめとなって
やまいただき
そそ

やまいただきから
くもとなったたましい

またあめとなって
やまいただき
そそいで
かえってくる





天上から降り注ぐ
  木村達也

雲となった魂は
天上をいったり
きたりする

そして
天上で
集まり始める

やがて魂は
雨となって
山の頂に
降り注ぐ

山の頂から
雲となった魂

また雨となって
山の頂に
降り注いで
帰ってくる











もどる 天から降りる水

てんじょうからふりそそぐ
   きむらたつや

くもとなったたましいは
てんじょうをいったり
きたりする

そして
てんじょうで
あつまりはじめる

やがてたましいは
あめとなって
やまのいただきに
ふりそそぐ

やまのいただきから
くもとなったたましい

またあめとなって
やまのいただきに
ふりそそいで
かえってくる


Tenzyô kara hurisosogu
    Kimura Tatuya

Kumo to natta tamasi'i wa
tenzyô o ittari
kitari suru

Sosite
tenzyô de
atumari hazimeru

Yagate tamasi'i wa
ame to natte
yama no itadaki ni
hurisosogu

Yama no itadaki kara
kumo to natta tamasi'i

Mata ame to natte
yama no itadaki ni
hurisosoide
kaettekuru








かな もどる 天から落ちてくる水


てんからりるみず
 木村達也きむらたつや

てんからあめとなって
やまそそいだみず
さわくだってあつまってくる

りゅうのごとくはし
巨大きょだいみずながれは
くろ岩石がんせき落差らくさ
轟音ごうおんとともにふりそそぐ

はげしくたたきつけるちから
みずしぶきがくだ
たましいはそこでくだけて
またあたらしくくみわるのだ





天から降りる水
 木村達也

天から雨となって
山に降り注いだ水は
沢を下って集まってくる

龍のごとく走る
巨大な水の流れは
黒い岩石の落差を
轟音とともにふりそそぐ

激しくたたきつける力に
水しぶきが砕け散る
魂はそこで砕けて
また新しくくみ変わるのだ










もどる 天から落ちてくる水

てんからおりるみず
   きむらたつや

てんからあめとなって
やまにふりそそいだみずは
さわをくだってあつまってくる

りゅうのごとくはしる
きょだいなみずのながれは
くろいがんせきのらくさを
ごうおんとともにふりそそぐ

はげしくたたきつけるちからに
みずしぶきがくだけちる
たましいはそこでくだけて
またあたらしくくみかわるのだ


Ten kara oriru mizu
    Kimura Tatuya

Ten kara ame to natte
yama ni hurisosoida mizu wa
sawa o kudatte atumatte kuru

Ryû no gotoku hasiru
kyodaina mizu no nagare wa
kuroi ganseki no rakusa o
gôon to tomo ni hurisosogu

Hagesiku tatakitukeru tikara ni
mizu sibuki ga kudake tiru
Tamasi'i wa soko de kudakete
mata atarasiku kumikawaru no da








かな もどる 川を下る魂


てんからちてくるみず
  木村達也きむらたつや

てんから
瀑音ばくおんひびかせて
みずちてくる

きよらかなみず
つかれたたましい
ちからあたえる

みずこまかい
飛沫ひまつとなって
そそ

つめたいみず
けたたましいねつ
ましていく

清浄せいじょう
たましいしずかに
うつくしさを
もどしていく





天から落ちてくる水
  木村達也

天から
瀑音を響かせて
水が落ちてくる

清らかな水は
疲れた魂に
力を与える

水は細かい
飛沫となって
降り注ぐ

冷たい水は
焼けた魂の熱を
冷ましていく

清浄の地で
魂は静かに
美しさを
取り戻していく








もどる 川を下る魂

てんからおちてくるみず
    きむらたつや

てんから
ごうおんをひびかせて
みずがおちてくる

きよらかなみずは
つかれたたましいに
ちからをあたえる

みずはこまかい
しぶきとなってふりそそぐ

つめたいみずは
やけたたましいのねつを
さましていく

せいじょうのちで
たましいはしずかに
うつくしさを
とりもどしていく


Ten kara otite kuru mizu
    Kimura Tatuya

Ten kara
gôon o hibikasete
mizu ga otite kuru

Kiyoraka namizu wa
tukareta tamasi'i ni
tikara o ataeru

Mizu wa komakai
sibuki to natte hurisosogu

Tumetai mizu wa
yaketa tamasi'i no netu o
samasite iku

Seizyô no ti de
tamasi'i wa sizuka ni
utukusisa o
torimodosite iku








かな もどる 


かわくだたましい
   木村達也きむらたつや

たましいやまいただきから
かわとなってながはじめる

やがてたきとなって
そそ

たましいがわをくだって
うみながれる

たましいうみから
またそらのぼ
くもになる

くもあめらし
たましいはふたたびやまいただき
りそそぐ






川を下る魂
   木村達也

魂は山の頂から
川となって流れ始める

やがて滝となって
降り注ぐ

魂は川をくだって
海に流れる

魂は海から
また空に昇り
雲になる

雲は雨を降らし
魂はふたたび山の頂に
降りそそぐ







もどる 

かわをくだるたましい
   きむらたつや

たましいはやまのいただきから
かわとなってながれはじめる

やがてたきとなって
ふりそそぐ

たましいはかわをくだって
うみにながれる

たましいはうみから
またそらにのぼり
くもになる

くもはあめをふらし
たましいはふたたびやまのいただきに
ふりそそぐ


Kawa o kudaru tamasi'i
     Kimura Tatuya

Tamasi'i wa yama no itadaki kara
kawa to natte nagare hazimeru

Yagate taki to natte
hurisosogu

Tamasi'i wa kawa o kudatte
umi ni nagareru

Tamasi'i wa umikara
mata sora ni nobori
kumo ni naru

Kumo wa ame o hurasi
tamasi'i wa hutatabi yama no itadaki ni
hurisosogu










かな もどる 振り返るとき


みず
   木村達也きむらたつや

たににはつめたいみず
おとててながれている

ぼくのからだはほとんどが
そのみずでできている

つめたいみずあつめて
ぼくのからだはできている

だからぼくは
いつかはみずにもどる

だからぼくは
いつかはみずながれになる






   木村達也

谷には冷たい水が
音を立てて流れている

ぼくの体はほとんどが
その水でできている

冷たい水を集めて
ぼくの体はできている

だからぼくは
いつかは水にもどる

だからぼくは
いつかは水の流れになる











もどる 振り返るとき

みず
   きむらたつや

たににはつめたいみずが
おとをたててながれている

ぼくのからだはほとんどが
そのみずでできている

つめたいみずをあつめて
ぼくのからだはできている

だからぼくは
いつかはみずにもどる

だからぼくは
いつかはみずのながれになる


Mizu
    Kimura Tatuya

Tani ni wa tumetai mizu ga
oto o tatete nagarete iru

Boku no karada wa hotondo ga
sono mizu de dekite iru

Tumetai mizu o atumete
boku no karada wa dekite iru

Dakara boku wa
ituka wa mizu ni modoru

Dakara boku wa
ituka wa mizu no nagare ni naru











かな もどる なくなった橋


かえるとき
  木村達也きむらたつや

さわのぼってきて
ふとうしろをかえ
紅葉もみじ木々きぎ
やさしいみずなが

なぜかえったのだろう
べつになにもないのに
ただすこかぜいて
みずながれているだけなのに





振り返るとき
  木村達也

沢を登ってきて
ふと後ろを振り返る
紅葉の木々と
優しい水の流れ

なぜ振り返ったのだろう
別になにもないのに
ただ少し風が吹いて
水が流れているだけなのに







もどる なくなった橋

ふりかえるとき
   きむらたつや

さわをのぼってきて
ふとうしろをふりかえる
もみじのきぎと
やさしいみずのながれ

なぜふりかえったのだろう
べつになにもないのに
ただすこしかぜがふいて
みずがながれているだけなのに


Hurikaeru toki
    Kimura Tatuya

Sawa o no botte kite
huto usiro o hurikaeru
Momizi no kigi to
yasasi'i mizu no nagare

Naze hurikaetta no darô
Betu ni nani mo nai no ni
Tada sukosi kaze ga huite
mizu ga nagarete iru dake nanoni








かな もどる 泣いている水車


なくなったはし
  木村達也きむらたつや

はし大水おおみずながされて
途中とちゅうからなくなっていた
橋桁はしげただけがのこっている

むかしはここにはしがあって
だれかがあるいていたことだろう
むかしはここにはしがあって
はしうえからさかなたことだろう





なくなった橋
  木村達也

橋が大水に流されて
途中からなくなっていた
橋桁だけが残っている

昔はここに橋があって
だれかが歩いていたことだろう
昔はここに橋があって
橋の上から魚を見たことだろう








もどる 泣いている水車

なくなったはし
 きむらたつや

はしがおおみずにながされて
とちゅうからなくなっていた
はしげただけがのこっている

むかしはここにはしがあって
だれかがあるいていたことだろう
むかしはここにはしがあって
はしのうえからさかなをみたことだろう


Nakunatta hasi
    Kimura Tatuya

Hasi ga ômizu ni nagasarete
totyû kara nakunatte ita
Hasigeta dake ga nokotte iru

Mukasi wa koko ni hasi ga atte
dareka ga aruite ita koto darô
mukasi wa koko ni hasi ga atte
hasi no ue kara sakana o mita koto darô







かな もどる またここに


いている水車すいしゃ
   木村達也きむらたつや

とおくをれば
へんかなしげな水車すいしゃ
なみだをこぼしながら
くるくるとまわっている

さかなになった
ボクはうえ見上みあげて
ゆらゆらゆれる
景色けしきている
みずそこしずんで
なみだにゆれる
景色けしきている





泣いている水車
  木村達也

遠くを見れば
変に悲しげな水車が
涙をこぼしながら
くるくるとまわっている

魚になった
ボクは上を見上げて
ゆらゆらゆれる
景色を見ている
水の底に沈んで
涙にゆれる
景色を見ている







もどる またここに

ないているすいしゃ
 きむらたつや

とおくをみれば
へんにかなしげなすいしゃが
なみだをこぼしながら
くるくるとまわっている

さかなになった
ボクはうえをみあげて
ゆらゆらゆれる
けしきをみている
みずのそこにしずんで
なみだにゆれる
けしきをみている


Naite iru suisya
     Kimura Tatuya

Tôku o mireba
hen ni kanasigena suisya ga
namida o kobosinagara
kurukuru to mawatte iru

Sakana ni natta
boku wa ue o miagete
yurayurayureru
kesiki o miteiru
Mizu no soko ni sizun de
namida ni yureru
kesiki o miteiru







もどる かな


またここに
   木村達也きむらたつや

ぼくのたましいはきっと
てんにのぼろうとして
たかところをさがす

くらいたに
さかのぼって
たきをかけあがる

またここに
つめたいしぶきを
あびるかもしれない

いつかこのすずしい
階段かいだんのようなたき
のぼるかもしれない





またここに
   木村達也

ぼくの魂はきっと
天にのぼろうとして
高い所をさがす

くらい谷を
さかのぼって
滝をかけあがる

またここに来て
つめたいしぶきを
あびるかもしれない

いつかこのすずしい
階段のような滝を
のぼるかもしれない








もどる

またここに
   きむらたつや

ぼくのたましいはきっと
てんにのぼろうとして
たかいところをさがす

くらいたにを
さかのぼって
たきをかけあがる

またここにきて
つめたいしぶきを
あびるかもしれない

いつかこのすずしい
かいだんのようなたきを
のぼるかもしれない


Mata koko ni
     Kimura Tatuya

Boku no tamasi'i wa kitto
ten ni noborô to site
takai tokoro o sagasu

Kurai tani o
sakanobotte
taki o kakeagaru

Mata koko ni kite
tumetai sibuki o
abiruka mo sirenai

Ituka kono suzusi'i
kaidan no yôna taki o
noboru kamo sirenai


Â Î Û Ê Ô 
â î û ê ô