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1 もくじ
隆平と桜子
平安の都でおきた事件を 追う隆平と雪乃。
1−11B
「隆平と桜子」前文へ
先頭に もくじ
隆平と桜子
木村達也
隆平
平安の都におこった事件について調べている。
行平
隆平の兄
雪乃
隆平の家に仕える女性 隆平と事件について調べている。
綾乃
雪乃の姉
惟忠
隆平の屋敷に仕える爺や
薫子
美貌の女性
桜子薫子の妹
鬼丸
野性的な大男 剣術の達人
敏行
桜子に仕えている。隆平の友人
珠子
高貴な女性
基泰
有力一族の次期当主。珠子の兄
隆平と桜子
平安の都を流れる川に架かる朱い橋の下になにが?
「隆平と桜子」1へ
先頭に もくじ
もくじ 隆平と桜子
1 朱(あか)い橋(はし)
1B うわさ
2 恐(こわ)い
2B 好奇(こうき)心(しん)
3 麗人(れいじん)
3B 爺(じい)や
4 がっかり
4B 大人(おとな)
5 魅了(みりょう)
5B 心配(しんぱい)
6 残念(ざんねん)
6B 男装(だんそう)
7 外(そと)に
7B 月(つき)
8 十字路(じゅうじろ)
8B 橋(はし)
9 調査(ちょうさ)
9B 評判(ひょうばん)
10 四つ辻(よつつじ)
10B 霊的(れいてき)
11 気配(けはい)
11B 木陰(こかげ)
1へ 前文 先頭
木村達也
1朱(あか)い橋(はし)
春にはまだ遠いある日、都に大雪が降りました。白い雪は、平安の都にある朱に彩られた神社や、都を流れる川に架かる朱い橋に、降り積もりました。
その日、都を流れる川に架かる橋の下で、美しい貴族の娘の亡骸が見つかりました。艶やかな色の美しい装束の娘は、胸から血を流していました。赤い血は地面に流れ、その上に白い雪が降り積もっていました。顔面はすでに蒼白で、生気が感じられませんでした。亡骸は、人目にさらされないよう、すぐに貴族の屋敷に移されました。
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1Bうわさ
その後、都大路にはある恐ろしいうわさが流れました。夜、都大路に鬼が出て、人をさらって殺すといううわさです。ある人は、鬼が歩いているところを見たと言います。また、ある人は、鬼が人を喰っているところを見たと言います。
月日がたち春になっても、そのうわさは消えませんでした。雪乃は鬼のうわさを聞いて恐ろしくなりました。雪乃は隆平の屋敷で、身の回りの世話をしています。姉の綾乃も一緒です。夜遅く、二人は綾乃の部屋で、隆平の帰りを待っていました。
「お姉様、昨日、都大路に鬼が出たといううわさをご存じですか?」
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2恐(こわ)い
「ええ、聞きましたよ。娘をさらって殺してしまうという話ですね。」
「ええ。恐いわ。私もさらわれたりしないかしら。」
「人のうわさというものは、だんだん大げさになって、ひとり歩きするものですよ。」
姉の綾乃は、落ち着いてそう答えました。
「そうですか・・・、何も起こらなければいいのですが・・・。」
雪乃は、心配そうにそう言いました。そして、しばらく考え込んで、黙ってしまいました。
「どうしたの?雪乃・・・。」
「今日は隆平様のお帰りが遅いのです。」
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2B 好奇(こうき)心(しん)
「そう言えば、そうですね。」
「隆平様は、好奇心が旺盛ですから・・・。」
「昨日の鬼のうわさを聞きつけたら大変ですね。」
「ご自分で調べるとか言いかねません。」
「それでは雪乃も心配ですね。」
姉の綾乃は、少し笑ってそう言いました。
屋敷の中が騒がしくなりました。
「隆平様がお帰りのようよ。早くお迎えに出ましょう。」
綾乃がそう言いました。雪乃も急いで玄関に行きます。屋敷の者が皆玄関に集まってきました。隆平は、長身に長い黒髪、彫りの深い色白の美男子です。
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3麗人(れいじん)
「隆平様は、眉目秀麗の麗人ですね。」
雪乃は小さな声で言いました。
「そうですね。」
綾乃がそう答えました。
「叡智を秘めた眉宇、長くて黒い髪、透けるような白い肌がとても素敵です。」
「雪乃は隆平様がお気に入りですね。隆平様に惹かれるのは、身近で働いている雪乃だけではありませんよ。だれもが心を惹かれます。」
姉の綾乃が、妹の雪乃に答えました。
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3B 爺(じい)や
「隆平様、いくらお忙しいからと言って、このようにお帰りが遅いのは困ります。」
惟忠がそう言いました。惟忠は、隆平の世話をしている爺やです。隆平が幼いころから色々と身の回りの世話をしています。隆平にとってはうるさい爺やでした。
「すみません、心配をかけたようですね。」
隆平は、優しくそう言いました。雪乃は、二人の会話を近くで聞いていました。
雪乃ゆきのは、心こころの中なかでそう思おもいました。
「このように遅おそくなりますと・・・。」
惟忠これただは、まだ話はなしを続つづけようとしています。
「昨日きのう都大路みやこおおじに出でたという鬼おにに喰くわれてしまいますぞ。」
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4がっかり
ああ、とうとう言いってしまわれた・・・。
雪乃ゆきのは、がっかりしました。
「何なに?爺じいや、都大路みやこおおじに昨日きのう鬼おにが出でたのですか?」
「はい、昨日きのう都大路みやこおおじではそのようなうわさが流ながれました。」
「そうでしたか。それでは、ちょっと見みてきます。」
そう言いうと、隆平たかひらは屋敷やしきを出でて行いきました。
「隆平たかひら様さま、お待まちくだされ・・・。」
あわてた爺じいやがとめても、もう後あとの祭まつりです。雪乃ゆきのは惟忠これただをにらみました。
よけいなことを、おっしゃらなくてもよろしいのに・・・。雪乃ゆきのは、隆平たかひら様さまが鬼おにに喰くわれたりしないか心配しんぱいです。
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4B大人(おとな)
雪乃ゆきのは、玄関げんかんに立ったったままでした。
隆平たかひらが屋敷やしきから出でかけたあと、兄あにの行平ゆきひらが帰かえってきました。屋敷やしきの者ものが玄関げんかんに集あつまってきました。雪乃ゆきのも綾乃あやのも急いそいで玄関げんかんに行いきました。行平ゆきひらは、隆平たかひらより少すこし大人おとなでした。長身ちょうしんに長ながい黒髪くろかみ、彫りほりの深ふかい色白いろじろの美男子びだんしです。
「行平ゆきひら様さまも、眉目びもく秀麗しゅうれいの麗人れいじんですよ。」
今度こんどは、姉あねの綾乃あやのが小ちいさい声こえで言いいました。「そうですね。」
雪乃ゆきのはそう答こたえました。
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5魅了(みりょう)
「叡智えいちを秘ひめた眉宇びう、見みるものを魅了みりょうする大きなおおきな瞳ひとみ、長ながくて黒くろい髪かみ、透すけるような白しろい肌はだ。」
「隆平たかひら様さまも同おなじですわ。」
「隆平たかひら様さまと似にていらっしゃいますが、少すこし大人おとなびて落おち着ついた感かんじがします。やんちゃで行動こうどう的てきな弟おとうとの隆平たかひらより思慮しりょ深ぶかい感かんじですね。行平ゆきひら様さまには、隆平たかひら様さまとはまた違ちがった魅力みりょくがありますよ。」
「お姉様ねえさまは行平ゆきひら様さまがお気きに入いりですね。」
「いいえ、そんなことありませんよ。」
綾乃あやのは笑わらってそう言いいました。
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5B心配(しんぱい)
「行平ゆきひら様さま、いくらお忙いそがしいからと言いって、このようにお帰かえりが遅おそいのは困こまります。」
惟忠これただは、先程さきほどと同おなじことを行平ゆきひらに言いいました。
「すみません、心配しんぱいをかけたようですね。」
行平ゆきひらは、優やさしくそう言いいました。雪乃ゆきのは、二人ふたりの会話かいわを近ちかくで聞きいていました。
兄あにの行平ゆきひら様さまに、弟おとうとの隆平たかひら様さまを連れ戻しつれもどしてきてほしい・・・。
雪乃ゆきのは、心こころの中なかでそう思おもいました。
「隆平たかひら様さまが、昨日きのう出でたといううわさの鬼おにを見みに行いくとおっしゃって、お出でかけになりました。」
続つづけて、惟忠これただはそう言いいました。
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6残念(ざんねん)
「そうですか。弟おとうとの隆平たかひらにも困こまったものです。」
「いかがいたしましょうか?」
「弟おとうとのわがままです、ほおっておいて下ください。」
行平ゆきひらはそう言いうと、屋敷やしきの奥おくに入はいって行いきました。姉あねの綾乃あやのは、それについて行いきました。
行平ゆきひら様さまは、隆平たかひら様さまのことが心配しんぱいではないのかしら・・・。
雪乃ゆきのは、行平ゆきひらの言葉ことばを少すこし残念ざんねんに思おもいました。
それにしても、隆平たかひら様さまはどこまで出でかけられたのかしら・・・。
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6B男装(だんそう)
雪乃ゆきのは、心配しんぱいでたまりませんでした。
雪乃ゆきのは、隆平たかひらを追おいかけて、夜よるに屋敷やしきを出でました。平安京へいあんきょうでは、普通ふつう女おんなの子こは外そとへ出でたりはしません。ましてや夜中よなかに出でかけるなど考かんがえられないことでした。雪乃ゆきのは、動うごきやすいよう男装だんそうをして出でかけました。見みた目めは、小ちいさくて細身ほそみの美少年びしょうねんのようでした。
やはり、隆平たかひら様さまのことが心配しんぱいです・・・。
雪乃ゆきのは小走こばしりで都大路みやこおおじを進すすみます。都大路みやこおおじは恐おそろしい鬼おにが出でるといううわさです。雪乃ゆきのは恐こわくて仕方しかたがありません。
月つきのある夜よるでした。都大路みやこおおじの上うえには、細ほそい月つきが美うつくしく輝かがやいています。神社じんじゃやお寺てらが、月つきの光ひかりにしっとりと濡ぬれていました。
雪乃ゆきのは、やっと隆平たかひらに追おいつきました。
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7外(そと)に
「隆平たかひら様さま。お待まちになって下ください。」
雪乃ゆきのがそう呼よびかけたとき、隆平たかひらは夜よるの都大路みやこおおじを一人ひとりで歩あるいていました。
「駄目だめじゃないですか、雪乃ゆきの。女おんなの子こが外そとに出でてはいけませんよ。」
隆平たかひらは、優やさしく雪乃ゆきのを叱しかりました。
「鬼おにが本当にほんとうに出でたらどうするのですか。」
「ごめんなさい。でも、隆平たかひら様さまのことが心配しんぱいで。」
平安へいあんの都大路みやこおおじには桜さくらの花はなが咲さき始はじめていました。隆平たかひらと雪乃ゆきのは一緒いっしょに歩あるき始はじめました。
「桜さくらが咲さき始はじめていますね。」
「ええ、私わたしも好すきですわ。」
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7B月(つき)
「細ほそい月つきには、美うつくしい桜さくらの花はながよく似合にあいます。」
「そうですわね。」
「朱しゅ塗ぬりの神社じんじゃや仏閣ぶっかくにも、桜さくらの淡あわい桃色ももいろはよく映はえます。」
「ええ・・・。」
「桜さくらの花はなが満開まんかいになるのを待まち遠どおしく思おもいます。」
「隆平たかひら様さまは、桜さくらの花はなが好すきなのですね。」
「ええ、とても心こころが惹ひかれます。」
夜よるの都大路みやこおおじを歩あるいている人ひとはあまりいませんでした。それでも、隆平たかひらは、都大路みやこおおじで通行つうこうする人ひとをつかまえては、鬼おにに関かんする情報じょうほうを聞ききました。
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8十字路(じゅうじろ)
「夜よるに鬼おにを見みたという人ひとがこの辺あたりには多おおくいます。」
「どんなところに出でますか?」
「ええ、川かわや橋はしのあるところだと聞きいています。」
また、べつの人ひとをつかまえて聞ききました。
「鬼おにが出でるのは夜よるだけらしいですね。」
「どんなところに出でますか?」
「都大路みやこおおじの十字路じゅうじろに出でるといううわさです。」
また、べつの人ひとをつかまえて聞ききました。
「鬼おにだけでなく、亡霊ぼうれいも出でるといううわさがあります。」
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8B橋(はし)
「亡霊ぼうれいですか。どんなところに出でますか。」
「ええ、亡霊ぼうれいは、都みやこを流ながれる川かわに架かかる朱色しゅいろの橋はしの辺あたりに出でます。」
隆平たかひらは聞きいたことをまとめました。
「鬼おには夜よるにしか現あらわれないこと、また、十字路じゅうじろや川かわや橋はしのあるところに出でることもわかりました。また、鬼おにだけでなく亡霊ぼうれいも出でるようですね。」
隆平たかひらは、雪乃ゆきのにそう言いいました。
「それだけわかればすごいですわ。」
「今夜こんやは、この辺あたりで帰かえりましょう。雪乃ゆきのを連つれて、夜よるの都大路みやこおおじを歩あるくのは危険きけんです。」
「ごめんなさい。私わたしのせいで・・・。」
「ごめんなさい。私(わたし)のせいで・・・。」
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9調査(ちょうさ)
「いいえ、鬼おにのうわさが気きになるので、しばらくは調査ちょうさを続つづけようと思おもいます。」
隆平たかひらはそう言いいました。
隆平たかひらと雪乃ゆきのが屋敷やしきに帰るかえると、兄あにの行平ゆきひらが待まっていました。
「雪乃ゆきの、女おんなの子こがこんな夜よるに外そとへ出でてはいけませんよ。」
行平ゆきひらは、雪乃ゆきのを見みつけると、早速さっそくそう言いいました。
「ごめんなさい。」 「もう、奥おくへ行いって休やすみなさい。」
「はい、わかりました。」
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9B評判(ひょうばん)
「兄上あにうえ、ただいま帰かえりました。昨日きのう出でたという鬼おにですが、今日きょうは現あらわれませんでした。」
行平ゆきひらは、しばらく考え事かんがえごとをしているようでした。
「春はるまだ遠とおい大雪おおゆきの日ひ、亡骸なきがらとなって発見はっけんされたのは、薫子かおるこ様さまだそうです。」
隆平たかひらはひどく驚おどろきました。薫子かおること言いえば、都みやこでも評判ひょうばんの美貌びぼうの持もち主ぬしでした。そして、豊ゆたかな歌うたの才能さいのうを持もっていました。隆平たかひらは、その美貌びぼうと歌うたの才能さいのうに魅ひかれて、娘むすめの屋敷やしきに足あし繁しげく通かよったことがあります。近ちかごろ顔かおを見せみせないから、おかしいと思っおもっていました。隆平たかひらは、この事件じけんをひどく悲かなしく思おもいました。
「なぜ、薫子かおるこ様さまが死しななければならないのですか。」
隆平たかひらは、強つよい憤いきどおりを感かんじました。
「それは、まだわかりません。」
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10四つ辻(よつつじ)
「兄上あにうえ、鬼おにの仕業しわざだとされていますが、本当ほんとうでしょうか。」
「さて、それは信じしんじがたい話はなしですが、一応いちおう調査ちょうさは必要ひつようでしょう。」
「わかりました、兄上あにうえ。鬼おにの調査ちょうさを続つづけてみます。」
月つきの美うつくしい夜よるでした。天てんには細ほそい月つきが輝かがやいています。隆平たかひらは、都大路みやこおおじの四つ辻よつつじを見張みはっていました。雪乃ゆきのも一緒いっしょでした。深夜しんや、だれもいない四つ辻よつつじは、不気味ぶきみな雰囲気ふんいきでした。
「隆平たかひら様さま、どうしてこのような四つ辻よつつじを見張みはるのですか?」
「道みちが十字じゅうじに交まじわっているところは異界いかいとの出入でいり口ぐちになりやすいと言いわれています。」
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10B霊的(れいてき)
「都大路みやこおおじには十字路じゅうじろはいくつもありますよ。」
「その中なかでもそこは霊的れいてきな雰囲気ふんいきを漂ただよわせています。すぐ近ちかくに神社じんじゃがあるせいかもしれません。不気味ぶきみな雰囲気ふんいきを感かんじませんか?」
「はい、私わたしも不気味ぶきみな雰囲気ふんいきを感かんじます。」
辺あたりは真まっ暗くらです。鬼おにのうわさのせいか、都大路みやこおおじを歩あるいている人ひとはまばらです。隆平たかひらと雪乃ゆきのは、鬼おにの現れるあらわれるのを待ちまちました。
「雪乃ゆきの、寒さむくないですか?」
春はると言いえど、夜よるはまだ肌寒はだざむい日ひもありました。
「いいえ、隆平たかひら様さま、寒さむくありませんわ。」
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11気配(けはい
「そうですか。」
そのとき、隆平たかひらと雪乃ゆきのは、ふと怪あやしい気配けはいを感かんじました。そして、都大路みやこおおじを行いく鬼おにらしき影かげを見みつけたのです。
「隆平たかひら様さま、何なにか怪あやしい影かげが走はしりました。」
雪乃ゆきのが、ささやくような声こえで言いいました。
「よし、あとをつけましょう。」
その影かげは、都大路みやこおおじの四つ辻よつつじを駆かけ抜ぬけました。隆平たかひらと雪乃ゆきのは、こっそりとあとをつけます。影かげは音おともなく走はしって行いきます。そして、神社じんじゃの階段かいだんを上のぼりはじめました。その神社じんじゃの階段かいだんは千せん段だんもあります。影かげは一番いちばん上うえまで、一度いちども休やすむことなく上のぼって行いきました。
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11B木陰(こかげ)
「隆平たかひら様さま、お待まちになって。」
雪乃ゆきのはついて行いくのがやっとでした。隆平たかひらは頂上ちょうじょうに上のぼったとき、立たち止どまって下したのほうを見みました。雪乃ゆきのはまだ来きません。その後ご、木陰こかげに隠れかくれて影かげをじっと見みました。雪乃ゆきのがようやく追おいついて来きました。
驚おどろいたことに、影かげは神殿しんでんの前まえまで来くると、祈いのりはじめました。その祈いのりは長ながい時間じかん続つづきました。
「隆平たかひら様さま。何なにかお祈いのりしていますよ。」
「そのようですね。」
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