ホーム もくじ          小説 童詩    紹介
みかん

  もくじ 
じんぶつ

こちゃまる


おしょう


みかん
「みかん」の1へ  
もくじ
 先頭へ

もくじ みかん
1光っている
2みかんの皮
3和尚さん
4もったいない
5みかん和尚
6びっくり
7演説
8安心
9きまえがいい
つぎへ もどる
先頭へ

先頭へ


1 ひかっている

 こちゃまるは、たびをしながら修行しゅぎょうをしているこどものそうです。こちゃまるは、ちいさなむら入り口いりぐちにたどりつきました。そこにちいさなおみせがあります。みせさきにはみかんがならんでいました。よくると、そのなかひかっているみかんがあります。みかんは十個じっこくらいずつちいさなかごのなかれられていました。かごはぜんぶでいつつあります。こちゃまるは自分じぶんをこすって、もういちどよくてみました。やはりほんのりとひかっているようです。いちばんみぎはしのかごのいちばんうえにあるみかんです。こちゃまるははしってみせまでいくと、みせのおじさんにいました。
「おじさん、このみかんひとつってください。すこしひかっているよね」
「ああ、よくみがいたからな」 おじさんはわらってそういました。こちゃまるがにとったみかんをると、もうひかっていませんでした。ほかのみかんとおなじいろをしています。
のせいだったのかなあ?たしかにひかっていたがするんだけど」 せっかくめずらしいみかんをつけたとおもったのに、こちゃまるはなんだかそんをした気分きぶんでした。
つぎへ もくじ

2 みかんのかわ

 こちゃまるは、みかんをにもってあるいていきました。ときどきみかんをぽんぽんとちゅうげます。みかんをながめていたら、なんだかおなかがすいてきました。
「もっていてもしかたないから、べてしまおう」 こちゃまるはみちばたのいしにすわると、みかんのかわをむきました。
「あまくておいしいなあ」 こちゃまるは、やはりみかんをってよかったとおもいました。 べたあと、かわをすてようとにとったときへんなことにがつきました。
「あれ?みかんのかわのうらになにかかいてあるぞ?」 みかんのうらには、せんがいっぱいかいてあります。それにおてらやおみせのがかいてあります。
「このせんみちかな?みかんのかわのうらにかいた地図ちず?この星印ほしじるしはなんだろう?」 のおてらなか星印ほしじるしがついています。こちゃまるは、みかんの地図ちずながら、おてらにいってみることにしました。 こちゃまるは、みかんのかわのうらをながら、みちあるいています。
「えーっと、みかんの地図ちずによると、このあたりかな?」 こちゃまるがあるいていくと、ふるおおきなおてらえてきました。
「このおてらかなあ?なにがあるのかな?」
 つぎへ もくじ

3 和尚おしょうさん

 こちゃまるは、おてらもんからなかをのぞきました。本堂ほんどうまえ石段いしだんに、和尚おしょうさんが、あたまをかかえてすわっていました。
「なんだろう?」 こちゃまるはもんからはいって、和尚おしょうさんにちかづいていきました。
和尚おしょうさん、どうなさったのですか?なにかなやみごとでも・・・?」
「ああ、きみはだれかな?」
「ぼくはたび修行しゅぎょうそうでこちゃまるともうします」
「こちゃまるか…。わしはこのおてらそう大寛だいかんもうす。じつは、むらひとがわしのことを、みかん和尚おしょうとよぶので、こまっておるのだよ」
「え?みかん和尚おしょう?いい名前なまえだとおもうけど…」
「いやいや、わしにはちゃんと大寛だいかんというがあるのじゃ。ちゃんと自分じぶん名前なまえで、大寛だいかん和尚おしょうとよんでほしいのじゃよ。こまったものじゃ。それで、あのみかんのってしまおうとおもうのだが…。もったいないかな?」 和尚おしょうゆびさすにわには、おおきなみかんのがありました。ぜんぶで十本じっぽんくらいのりっぱながあります。どのにもみかんのがいっぱいなっていました。真ん中まんなかあたりにひときわおおきながあります。
「みかんのるの?」
つぎへ もくじ

4 もったいない

 こちゃまるがそううと、いちばんおおきなのみかんのひかったようながしました。
「あれ?みかんのひかったようながするなあ」 こちゃまるはいちばんおおきなちかづいていきました。
へんだな?ひかったようながしたけど…。和尚おしょうさんひとつもらうよ」
「だめじゃ、だめじゃ。もったいない」
「もう、けちな和尚おしょうさんだなあ。ひかるみかんかたしかめようとおもったのに…」
「みかんがひかるわけなどないわい」
「こんなりっぱなってしまうのは、やはりもったいないとおもうよ」 こちゃまるがそううと、みかんのがまたひかりました。
「うん、やはりもったいないかの?」 和尚おしょうさんはそうつぶやきました。
「やはり、みかんのがすこしひかったようながする…」 こちゃまるはそうつぶやきました。 そのときおてらへいそとからこえがしました。
和尚おしょうさん、たびからかえってきたむらものですが、もうあるきつかれてたおれそうです。おいしそうなみかんをわけてくださいな」 和尚おしょうさんはへいそとにむかっていました。 
つぎへ もくじ

5 みかん和尚おしょう

「だめだめ、もったいない。どこかほかへっておくれ」 村人むらびとはしょんぼりして、いってしまいました。
和尚おしょうさん、みかんをわけてあげればいいのに」
「ああ、うるさい。もったいないわい。わしをみかん和尚おしょうとよぶようなむらのやつらに、みかんなどやれるか。ちゃんと大寛だいかん和尚おしょう自分じぶん名前なまえでよんでほしいものじゃ。どうしたらよいかのう?そのためだったら、なんでもするのじゃが…」 和尚おしょうさんは、またあたまをかかえこんでしまいました。
「みかん和尚おしょうとよばれないようにするためになら、なんでもするの?」
「ああ、なんでもいいぞ」
「じゃあ、うまくいったら、あのみかんをぼくにぜんぶくれる」
「みかんか…。もったいないけどいいぞ。ってしまおうかとおもっているくらいだからな」 こちゃまるはにわみかんのをじっとつめました。そしてじっとかんがえました。
「ん〜、どうすればいいのかなあ。よし、そうだ」こちゃまるはなにかひらめいたようです。こちゃまるはおてらもんまではしっていくと、そのうえによじのぼりました。やねのうえたかくて村中むらじゅうわたせます。ちいさなむらなので、いえはそんなにおおくありません。こちゃまるは、村中むらじゅうにひびくようなおおきなこえいました。
つぎへ もくじ

6 びっくり

むらのみなさん。おてらにあつまってください。和尚おしょうさんがみかんをむらのみなさんにあげます」 和尚おしょうさんがみかんをくれるといううわさは、またたくまに村中むらじゅうにひろがりました。
「ほんとうだろうか?」
「あのけちな和尚おしょうさんがまさか…」 村人むらびと口々くちぐちにうわさをしながらあつまってきます。びっくりしたのは和尚おしょうさんです。
「これ!こちゃまるよ。わしのことをみかん和尚おしょうとよぶ村人むらびとに、みかんをやるなどとっていないぞ」
「やだなあ、和尚おしょうさん。みかん和尚おしょうとよばれなくなったら、みかんをぜんぶぼくにくれるってったじゃないですか。みかん和尚おしょうとよばれるのがいやで、ってしまうつもりだったんでしょう?ぼくにまかせて」 和尚おしょうさんは真っ赤まっかになっておこったあと、真っ青まっさおになってたおれそうになり、あたまをかかえこんでうずくまりました。
むらのみなさん。おてらにわにあつまって。まだ、べてはだめですよ」 こちゃまるは和尚おしょうさんにおかまいなしに、村人むらびとにわにまねきれました。
たびそうさんよ。ほんとうかね?あのけちなみかん和尚おしょうがみかんをくれるなんて、いままでいちどもなかったので、しんじられないんだが…」
つぎへ もくじ

7 演説えんぜつ

「そうだ、そうだ。いいかげんなことをって、おれたちをだますとゆるさないぞ」 にわにあつまった村人むらびと口々くちぐちにそういました。こちゃまるは、みかんをれるおおきなはこをもってきました。そして、そのうえにのりました。こちゃまるは、まだこどもでちいさいので、なにかにのらないと、大人おとなとおなじたかさになりません。
むらのみなさん…」 こちゃまるの演説えんぜつがはじまりました。
和尚おしょうさんは、むらのみなさんが和尚おしょうのことをみかん和尚おしょうとよぶのをいやがっています」
「なんでだ?」
「いいじゃないか。りっぱなみかんをいっぱいもっているんだし…」
「だいたい、みかんをたくさんもっているくせに、いちどもくれたことがない」 むら人々ひとびとは、口々くちぐちにそういました。 こちゃまるは、さらにこえおおきくしていました。
和尚おしょうさんは自分じぶん名前なまえ大寛だいかん和尚おしょうとよんでほしいとっています。それがほんとうの名前なまえなのだから。みかんがにわにあるからとって、みかん和尚おしょうとよんでほしくないとっています。みなさんは、自分じぶん以外いがい名前なまえ自分じぶんがよばれたとしたら、うれしいですか?」
つぎへ
 もくじ

8 安心あんしん

「うん…。あまりいいきもちはしないかもしれないなあ」
「でも、そんなことにするのはへんよ」
「わたしは、みかんというは、かわいいとおもいます」
「そうじゃ、わしもいい名前なまえだとおもうぞ。でも和尚おしょう さんが、そうよばれたくないというなら、そうよぶことはやめるぞ」
「じゃあ、わたしもやめる。」 それをいてこちゃまるはいました。
むらのみなさん、和尚おしょうさんのことを、大寛だいかん和尚おしょうとこれからはよんでくれますか?」
「いいよ」 村人むらびとは、こえをそろえていっせいにいました。和尚おしょうさんはその言葉ことばいて、ほっと安心あんしんしたようでした。
和尚おしょうさん、村人むらびとはみんな、みかん和尚おしょうとよぶのをやめるとっています。これでいいですか?」
「ありがとうこちゃまる。たすかったよ」
つぎへ もくじ

9 きまえがいい

「じゃあ、むらのみなさん。きょうはあつまってもらったおれいに、和尚おしょうさんからみかんのプレゼントがあります」 村人むらびとなかにどよめきがはしりました。
「やったあ」
「なんだ、きまえがいいじゃないか」 「おおきいみかんのでおいしそうだ」
和尚おしょうさんばんざい」 むら人々ひとびとは、口々くちぐちにそういながら、みかんをべました。こちゃまると大寛だいかん和尚おしょうは、うれしそうにそのようすをていました。そしてかおをみあわせてわらいました。
「こんなふうでよかったのかな?られなくてよかったね」 こちゃまるは、いちばんおおきいちかづいて、そういました。おおきな先端せんたんに、まだのこっているみかんのが、すこしひかったようながしました。
先頭へ  「みかん」へもどる  
もくじ